Chim↑Pom "imagine"展 @ SNAC/無人島プロダクション


【ART EXHIBITION REPORT】

10年8月7日〜9月11日にかけて、無人島プロダクション(東京・清澄白河)にて、Chim↑Pomによる”Imagine”展が開催された。

今年で5周年を迎えたChim↑Pomは、予てから考えていたと言う「見えない事」をキーワードに、ブラインドサッカー日本代表として活躍する盲人の”ハジくん(寺西一)”にスポットを当てた作品展となった。
盲人二人による”変顔にらめっこ”をChim↑Pomが第三者的立場(視点)として、その模様を笑い、その声(笑い)を聞いて勝負する新感覚ゲームは、複雑なレイヤーを重ねた笑いと想像をテーマにしたChim↑Pomらしい映像作品に仕上がった。
その他にも、ハジ君の使用している杖を参考に硝子で作られた杖は「見える、見えない世界」を比喩した繊細さと儚さを持ち合わせたオブジェ作品、ジョン・レノンの名曲「イマジン」を生み出したキッカケとなったオノ・ヨーコのグレ-プフル-ツ・ジュ-スの(指示する芸術)詩を点字に施しエロ本と絡めた再構築作品、第三の目(魔眼)を想起させる額への落書きは、思わず笑みが出るようなChim↑Pomと”ハジ君”の温かい良好な関係を表す飲み屋での写真など計7点を発表した。
また今回は「一度真っ暗になった上で入ってほしい」という要望から、 見えない世界観を表現するように、真っ暗な入り口を通り過ぎた後に作品が待ち構えている。
そして作品のタイトルボードには、全作品に今回の重要なビジュアル要素である点字が添えられている。

さわりなさい
2010
グラビアやヌードを掲載している洋雑誌"IMAGINE"の誌面に点字を添え、女性の裸を触っている感覚に落とし込んだ作品。
さわりなさい
2010
各ページに身体を絡めるように点字が施されている。
想像とは何か?両視点から捉えた一冊となっている。
私という作品を解説する作品という私
glass, paint, CD, CD player, headphone 2010
"私という作品を解説する作品という私"と題した作品は、ヘッドフォンからモザイク気味の声の女性が、美術について投げかけるような視聴作品。

Score
paper in braille, ink 2010
作品の近くで”めくらのがっこう”が聴こえ、その歌詞となる楽譜にはハジ君の直筆と共に点字が添えられている。
独唱
video 2010
"独唱"と名付けられた作品は、障子の小さな穴の先に、エリィ氏がピアノを引き、ハジ君が歌う心温まる映像が流れている。
 「KIRAKIRA
panel, acrylic, swarovski 2010
眩いスワロフスキーが全面施された作品は、タイトル通り彼らの世界観を表すように”KIRAKIRA”の点字が刻まれている。
 「Blind Musical
glass, string 2010
盲人にとって手放す事の出来ない杖は、透明ガラス製になっており、「見える、見えない」の関係性、繊細さ、儚さを感じさせる作品。
Make love in the dark
video 2010
"Make love in the dark"と題した映像作品は、二人の盲人が変顔にらめっこを行い、Chim↑Pomが笑い、その笑い声に笑ったら負け行っている。映像には写らないがChim↑Pomの笑い声が聞こえ、まるで盲人の二人はChim↑Pomの笑い声で笑っているかのように見える。
彼らの関係性が鮮やかに描き出された作品。という多面的な構成。

All photo credit
(c)2010 Chim↑Pom
photo:Kenji Morita
courtesy of Mujin-to Production, Tokyo





PROFILE

Chim↑Pom/(チン↑ポム)
2005年8月、東京で結成されたアーティスト集団。
メンバーはエリイ、卯城竜太、林靖高、水野俊紀、岡田将孝、稲岡求の6人編成。
2005年、会田誠のサンフランシスコでの個展開催時に、会場の一部で作品を展示し、アート界にデビューする。
映像作品を織り交ぜたインスタレーションを中心とした展示で、動物の生死や都市におけるタブーなど、刺激的なテーマを次々に扱い、常に賛否両論を巻き起こしている。
2008年には被爆地である広島県の上空に、飛行機で「ピカッ」という文字を描いたことが問題となり、同時期に東京都で開催中だった展覧会が急遽中止されるという事態となった。
2010年、河出書房新社よりChim↑Pomの初作品集が出版。同年アジアの最優秀若手作家を決める、「Asia Art Award」のファイナリストが発表され、日本代表に選出される。日本初のコンセプトシート・ワークショップ「コン平」を映像作家大月壮と開始。

IMPRESSION

タイトル通り、普段は展覧会の説明するSNACでも積極的に作品紹介をせずに、閲覧者に想像力(イマジン)を喚起するような演出が行われました。
「見える、見えない」という関係性の題材は、今日までファッション等の他ジャンルにも多様されてきた題材ですが、社会性を孕んだグレーゾーンを突く題材はChim↑Pomらしい回答(作品)で、非常に見応え(考え深い)展覧会となりました。
これまでカンボジア(地雷)、広島(原爆)といった安易に触れてはならない事柄に対して、一度、揶揄(一捻り)した形で、改めて個々に訴えかけるアティチュードは、毎度ながら非常に感銘を受けます。
極端な話、PRでいくら真面目に「触れてはイケない事」と情報操作で鵜呑みした形より(勿論、そういった事は必要)、揶揄であろうと一度「考える」という工 程を受け手が行う事の方が、結果的に受け手が批判的な回答をしたにしても、その事柄に対して「考えた上での答え」を出す方が、よっぽど意義を感じるからです。
仮に自分が、Chim↑Pomの立場になったら?そう考えると、とてつもないプレッシャー(勇気)が必要であり、自己の世界観を押し付けがましいマスターベーションになりがちな現代美術の作品が多い中、こういった姿勢を貫けるのは稀有な存在だと改めて感じました。 これからも彼らが打ち出す作品は、注目していきたいと思います。

文:スナオシタカヒサ
Text by Takahisa Sunaoshi